エフェクターレビュー

ZOOMマルチストンプ筐体のハイスペックルーパー MS-90LP+

ZOOMのマルチストンプシリーズから、待望のルーパー特化モデル「MS-90LP+」が登場しました!

ルーパーもマルチストンプも複数所有してきた過去のある筆者ですがこれにはもう注目せざる負えません!

このモデルは、ループ録音・再生だけでなく、リズムトラックや多彩なループエフェクトを搭載し、クリエイティブなループパフォーマンスを可能にする充実の一台。
さらに、BOSSやTC Electronic、Mooreなどの定番小型ルーパーと比較して、その魅力を探っていきます。ぜひ最後までご覧ください!

ZOOMマルチストンプとは


ZOOMのマルチストンプシリーズは、2011年の初登場以来、小型マルチエフェクターの分野で先駆者的存在として進化を遂げてきました。

手のひらサイズの筐体に高品質なエフェクトを搭載し、軽量コンパクトながら多機能を実現。
去年筐体がリニューアルされ、大変話題になりましたね。

現行ラインナップ

「MS-50G+」

ベーシックモデル

「MS-70CDR+」

空間系特化モデル

「MS-200D+」

歪み系特化モデル

「MS-60B+」

ベース向けモデル

「MS-80IR+」

アンプシミュレーター、IR特化
がリリースされています。

MS-90LP+は、そんなマルチストンプシリーズのDNAを受け継ぎつつ、ZOOM初の「ルーパー特化モデル」として登場しました。

MS-90LP+の特徴

MS-90LP+は、小型ながらルーパーとしての機能を徹底的に追求したモデルです。

以下、その主な特徴をご紹介します。

高音質設計

MS-90LP+は、ZOOM独自のデュアルADコンバーターを採用しており、ローゲイン時とハイゲイン時に自動で切り替え。
これにより、従来型よりもワイドレンジかつクリアなループ再生を可能にしています。

また、録音データは32-bit float WAV形式で保存され、録音時のダイナミックレンジが非常に広いのが特徴です。

音量を上げた際にクリップしても、データそのものはクリップしておらず、音量を調整することでクリアな波形を復元できます。
これにより、ライブやスタジオ環境でも、プロフェッショナルクオリティのループパフォーマンスが可能となります。

コンパクト且つ多機能

マルチストンプ筐体を採用したコンパクトなデザインながら、多機能を詰め込んでいます。
以下のようなスイッチや接続端子が充実しており、自由度の高いループ操作が可能です。

5つのスイッチ

メインスイッチで録音/再生。
UNDOスイッチでオーバーダブを取り消し/復元。
STOPスイッチで再生停止やデータ削除。
RHYMスイッチでリズムトラックのON/OFF、
LOOP FXスイッチでループエフェクトの操作が可能です。

ステレオ入出力
入力音とループ再生、リズムトラックを独立して出力可能。
例えば、リズムトラックにだけ外部エフェクトを加えるといった高度なルーティングが行えます。

USB端子/MIDI端子

USB接続でループ音源のインポートやエクスポートができるほか、MIDI対応で外部コントローラーを接続可能。
同期演奏や複雑な操作にも対応します。

ループエフェクト


MS-90LP+には、以下の8種類のループエフェクトが収録されており、独創的なパフォーマンスをサポートします。

REVERSE:フレーズを逆再生する

HALF SPEED:半分のスピードで再生

DOUBLE SPEED:倍速で再生

HOLD:短い区間を繰り返し再生

TAPE STOP:再生速度を徐々に下げながら停止

ONE-SHOT PLAY:一度だけ再生して停止

RESTART:フレーズの頭出しを行う

TAP TEMPO:スイッチでテンポを設定

一部のエフェクトは、アンラッチ設定により、スイッチを踏んでいる間だけオンにすることも可能。

ループ音源をフィーチャーしたDJ的なパフォーマンスに特化したラインナップです。

筆者は以前BOSSのRC-300とRC-505を所有しており
そちらにもエフェクターは内蔵されていたのですが、ディレイやディストーション、フィルター系など
ギタリストにも馴染みの深いエフェクトが多くて
ただ、正直そっちはルーパー以外で操作したいって事でほぼ使ってなかったんですよね。

MS-90LP+はサンプラー的なアプローチで固めてきている印象で正直とても気になっています。

類似の小型ルーパーとの比較

MS-90LP+は、他の小型ルーパーとどう異なるのでしょうか?

代表的なモデルと比較してみましょう。

BOSS

RC-1

初心者向けのシンプルな操作性が魅力のルーパー。1ループ記録が基本で、入門者に最適です。

RC-1はとにかくシンプルなルーパーで
エフェクトだのメモリーだの余計な機能は一切持ち合わせず、ただ1トラックループさせるという部分に特化した製品です。

あらゆる面でMS-90LP+に軍配が上がるように見えますが、細かいことは良いからとにかく1トラックループさせたいだけという方にはうってつけ。
何よりBOSSコンパクトの筐体は恐ろしく頑丈。

勢いよくスイッチを踏むことが多いルーパーというジャンルではこの耐久性が案外重要だったりします。

シンプルさと頑丈さ
それがRC-1の強みです。

RC-5

LCDディスプレイを搭載し、ステレオ対応、リズムトラックやMIDI操作なども可能な上位機種。
AD/DA変換32bit、内部演算32bit浮動小数点と高品位なサウンドが特徴。
最大13時間録音可能、メモリーフレーズは最大99個保存可能

音質面ではMS-90LP+と拮抗
MIDI対応なので外部スイッチで拡張操作もできて、フレーズのメモリーも十分
ただし、エフェクトはリバースのみの様です。

価格は25000円程度なのでMS-90LP+の方がリーズナブル

お馴染みのBOSSコンパクトの筐体の頑丈さはピカイチです。

比較対象として最もふさわしいループステーションですが
RC-5で出来ることはMS-90LP+で出来てしまう
という事を考えると…

いい勝負ではありますが、耐久性以外はほとんどMS-90LP+に軍配が上がってしまう印象。

TC Electronic

Ditto Looper

シンプル操作のコンパクトルーパーで、音質の良さが特徴。

1ループでしかもモノラルのルーパーです。
その時点でRC-1より劣っていると思われがちですが
Ditto Looperの最大の強みは筐体の小ささです。

正直ボードにルーパーを入れる際はなるべく圧迫したくないなーと思っている人は多く
そのニーズを上手く汲んでいる一台です。

純粋にループだけしてくれればいいし余計な機能とか覚えたくない。
ボードを圧迫したくないという方向けです。

またトゥルーバイパスである点も見逃せません。

DITTO+

ループメモリー機能を追加し、複数のループ素材を保存可能にした進化版。

最大60分、最大99個のメモリーを保存が出来るようになったDitto
また、短いループに長いループを重ねる事ができるエクステンドループ機能を搭載。
これは4小節のバッキングに8小節のフレーズをオーバーダビング出来るというもので、これにより自由度の高いループパフォーマンスを可能にします。

このモデルもコンパクトなのでボードを圧迫したくない方におすすめです。

ただ、25,000円くらいしちゃうので割高感が否めない…

ただBOSSのRCシリーズと比較した上でDittoを選んでいるプレイヤーも大勢いるので
BOSSのスイッチと相性が悪い、Dittoの音の方が好き、トゥルーバイパスの方が良い等
Dittoならではの魅力が様々あるのだと思います。
BOSS自体が苦手な人たちの受け皿としてのファーストチョイスとしてのポジションも確立されている印象です。

Moore

Mooer LOOPER X2

最大77スロットに合計300分の録音が可能なステレオサンプリングルーパーペダルです。

オートレックモードを使用すると、録音開始音量を設定でき、これによってスイッチングと演奏を合わせる必要がなくなり、演奏を始めたタイミングで録音を開始する事が出来ます。

11のソングバンクにより、楽曲の各パーツを録音・保存し、スムーズな切り替えが可能。
ループフレーズをセクションごとに保存でき、ミニマルなループパフォーマンスだけでなく、楽曲のようにループフレーズを切り替えてパフォーマンスすることが可能です。

UNDO/REDOやキャンセル機能に対応し、操作性も抜群です。
外部フットスイッチにも対応。

コンパクトなサイズながら、多機能で柔軟なルーパーです。

Mooer GL100

ドラムマシンを装備した多機能ペダルです。

コンパクトなサイズながら、100種類・合計300分のフレーズループ保存、11ジャンル×20パターンのリズム収録など充実した機能を備えています。

1.3インチのタッチスクリーンで操作が簡単で、タイムストレッチ機能やDrumMatch機能により、ループとドラムのテンポやリズムの同期を実現。

録音時にはオートレコーディングやカウントイン機能でミスを防ぎ、クオンタイズで完璧なループを作成可能です。

また、専用ソフト「MOOER STUDIO」でオーディオデータの管理やアップデートが可能。

ヘッドフォンアウトを含む多彩な入出力端子を装備し、パフォーマンスから練習まで幅広く活用できます。

こちらは発表されたばかりのモデルでやはり特徴的なのは丸型のタッチディスプレイでしょう。

Mooreの二機種もかなり先進的なモデルでそれぞれ個性を持っていますが
MS-90LP+にも実はカウントイン、オートレック、フェード、の機能も備わっているので
その点に関してもMS-90LP+の懐の広さが伺えるという結果になりました。

それでもLooper x2のセクション機能は唯一無二ですし
GL100は丸型タッチスクリーンという固有の魅力がありますし
この記事を執筆している2024年12月19日時点ではまだ発表されたばかりなので十分に検討の余地があります。

比較まとめ

MS-90LP+は、これらのモデルに対し、ループエフェクトやリズムトラック、USBやMIDI対応など機能が非常に豊富。
特にプロ向けのループパフォーマンスにおいて圧倒的な柔軟性を提供します。

同価格帯の小型ルーパーの中では最高クラスのスペックと言って問題ない性能で
正直今挙げたモデルが霞むほどの性能を有しています。

価格も19800円程度なので
これはもうゲームチェンジャー的一台と言っても過言ではありません。

この中なら筆者は迷わずMS-90LP+を勧めます。

高音質なコンパクトルーパーを探している方
はじめてのルーパーに最適な一台を探している方
多機能コンパクトルーパーが欲しい
などあらゆる方に刺さる一台です
MS-90LP+
あえて言うなら
とにかくシンプルなものが良い、余計なこと考えたくない
という方はBOSS RC-1やDitto Looperを選んでおけば間違いないでしょう。

まとめ

ZOOMはこれまで培ったマルチストンプシリーズのノウハウを最大限に活用し、次世代ルーパーとして完成度の高い一台を生み出しましたね。

多彩なループエフェクト、プロフェッショナルな高音質設計、拡張性の高い接続端子群が特徴で、ライブパフォーマンスやクリエイティブな曲作りにも最適です。

ループ初心者から玄人
ちょっと面白いおもちゃを探している方にも是非認知していただきたい一台です。

筆者的にも、MS-90LP+はこれからの小型ルーパーの新たな基準となる可能性を感じています。
ZOOMには多トラックルーパーの開発も期待したいですね。

例えばG3X筐体の3トラックルーパーとか
そういう多機能且つリーズナブルなルーパー待ってます。

もちろんBOSSやTC、Mooreにも期待してます。
今まで限られたメーカーの寡占ジャンルみたいになってましたが、
各社で切磋琢磨してこのルーパーというジャンルを盛り上げてい頂きたいですね。

ABOUT ME
吉田寛定
ナチュラルハーモニクスで演奏してる人